衣服に使う化学物質による人体影響。悲惨な健康被害の実態と原因は?
この女性を見て、あなたはどう思いますか?
まるで破れた大きな顔面マスクを付けているように見えます。「酷い」「可哀想」そう思う人は少なくないでしょう。
しかし彼女の顔がこうなった原因は、私達の生活にあるのです。さらに住んでいる場所が違ったら、あなたがこうなっていてもおかしくなかったとしたら、今のままの生活を続けられる人はどの程度いるでしょうか。
このような犠牲の上に、私達は「早くて安い服」を着ているのです。
この記事でわかること
穏やかだった頃も…
バングラデシュ、ベトナム、トルコ、ルーマニア、カンボジア、インドネシア。これらの国に共通することは、繊維工場が多いことです。
先進国ほどしっかりとした治療を受けることができない地域も多いです。それでも病気の発症率自体が今よりも低く、自然も多く河川も綺麗な場所が多かったです。どこの国も観光スポットも多いです。
ベトナムのダナン(左画像)は緑豊かな綺麗な場所です。トルコだったらイスタンブール(右画像)は有名でしょう。歴史好き、またトルコ料理を堪能したい人にはいいスポットです。
他の国にもそれぞれ綺麗な観光スポットはたくさんあり、今でも人々が訪れています。
しかし見えないところでその自然が壊されており、人体に多大な悪影響を及ぼしています。
インドネシアを例に見てみると、人口自体は増え続けていますが、生まれてくる子どもが障害を持っていることが少なくありません。親は成長していく子どもを見ながら、自分より早く死んでしまうと覚悟していると言います。また30・40代ほどの大人が、元気だったその夜にぽっくり死んでしまうことも少なくありません。
これらの原因に私達の生活は大きく関わっているのです。
河川からの人体影響
その原因は繊維工場にあり、私達の服を作るためにさまざまな悪影響が出ているのです。
繊維工場では毎日、大量の化学薬品・物質が使われています。安い服を作ろうと思えば思うほど、その量は増えていきますが、その際の使用済みの汚染水がどうなるのかをご存知ですか?
実は、なんの処理もされること無く河川に流されるのです。そのためどんどん環境汚染が進んでいき、とんでもないことになっています。
⇒環境汚染についてはこちら
ガン、麻痺、奇形などさまざまな症状が…
このような汚水が流れ込んだ川の水を、現地の人は農業用水や生活用水として使用していきます。汚水から作られた農作物や魚などを食べ続け、何の影響もないわけがありません。
さらに川で遊ぶ子どももいるでしょう。裸足で遊び怪我をした時に病菌が入ったり、誤って水を飲んでしまうことがないとは言えません。
汚染された川、水が身近にあることは危険性しかないのです。実際にガン患者が溢れ、先天性の重度の麻痺や奇形などの子どもが産まれることも多くなっています。
しかし、医者に見せるためのお金はありません。親も子どもの死を待つしかない状況にあり、十分な治療が受けられないためガンになったらまず助かりません。
それだけでなく、皮膚病の発症率も高く、彼女のように皮膚にダメージを負ってしまう人は少なくないのです。
また繊維工場が多くあるインドネシアでは、認知症患者が非常に多くいるのをご存知でしたか?なんと人口の19%が認知症を患っていると言います。5人に1人は認知症なのです。日本は人口の約4%ですから、どれだけ高い数値なのかが分かります。これも化学物質の影響の1つなのです。
現地の人の犠牲、被害を顧みず低コストを求め続けた結果が今の現状を作っています。
下痢で死ぬ子どもが月1400人
このように繊維工場が多くあるアジア、東南アジア、中米などにおける水問題、特に河川の有害化学物質汚染は深刻で、健康被害があとをたちません。
それどころか不衛生な水の利用のために、毎年数十万人もの子どもたちが命を落としています。その中で5歳未満の子どもの1400人ほどが、毎日下痢によって亡くなっていると推測されていいるのです。
下痢で死ぬなんて、日本に住んでいて考えられますか?
汚染された水により抵抗力の低い子ども、高齢者から犠牲になっているのです。
皮膚を通し毒性物質を取り込むことも
河川など環境を汚染すれば、それは人に返ってくるものです。
皮膚は体の最大の器官であり呼吸をしています。そのため河川に流れた排水が蒸発した空気などは、皮膚を通して体に入り込み毒性化学物質を曝露し、頭痛から喘息、がんに至るまさまざまな健康問題を引き起こすのです。
そのため、河川の水を使用していなかったとしても、被害を被っている人々がいます。
また皮膚が取り込むのは汚染された空気だけではありあせん。
衣服は化学物質まみれ
さらに製品を作るために使われる化学物質も皮膚から体内に取り込んでいる場合があるのです。繊維製品を作るために使われている化学物質を加工工程別に見ていきましょう。
染料
すでに規制している国が多いですが、「アゾ系染料」は発ガン性物質を生成すると言われています。また「クロム系染料」は皮膚アレルギーを起こすと言われていますが、まだ十分な規制には至っていません。
抗菌・防臭加工
- トリクロサン
- 第四アンモニウム
- 酸化亜鉛
- 銀ゼオライト
これらの化学物質が使われ、接触性皮膚炎の発症原因となっています。
防縮加工
ポリウレタン樹脂や塩素化剤が使用されています。ポリウレタン樹脂はその硬化剤として使用されるイソシアネートという物質があり、強い毒性だけでなく発ガン性もあるのです。
防水加工
ポリ塩化ビニルやシリコーンゴムが使用されています。特にポリ塩化ビニルの原料である塩化ビニルの有毒性は、発ガン性物質として上位に上げられるほどです。
仕上げ加工
製品の見栄えを良くしたり、手触りや風合いを出すためにホルマリン樹脂加工が行われます。ホルマリン樹脂は気化すれば、ホルムアルデヒドになります。ホルムアルデヒドによる影響は濃度にもよりますが、こんな症状を引き起こします。
- めまい、抑うつ、昏睡などの中枢神経の抑制
- 消化管および呼吸器への刺激症状
- 腎臓の障害による排尿障害、無尿症、脳尿症、血尿
- 肺浮腫、呼吸器の障害、循環性ショックなどによる死亡
- 肺がんの罹患率を30%上げる
全てではないにしろ、製品化するためにはこれだけの化学物質を使っている可能性があります。皮膚からこんなにも多くの化学物質を取り込んでいるかもしれないと考えると、恐ろしいことです。
私達はこのような服を「安い!」と喜んで毎日着ているのです。
原因は大量の早くて安い服
どうして服を製造するのにこんなにも化学物質を使うのでしょうか?
それは早く、安く、大量の服を作るためです。今までよりも手間を減らすことができれば、服を早く製造することができます。そして早く製造できれば、同じ時間でも多く製造でき1着に当たる人件費も安くできます。
上記で上げた3点はファストファッションの特徴です。
つまりファストファッションの服には化学物質が多く使用されているということです。そのため、発展とともに多くの化学物質が使われ環境汚染や人体への悪影響を広めてきました。しかし、その服を着ている私達はそのことに気がついていないのです。食品の生産地は健康のためにと気にするのに、衣服の生産地・原料は気にしません。
衣服には上記のような化学物質が使われている可能性があり、それらは確実に現地の人を不幸にし、私達自身も病気に陥れていくものかもしれないのにです。
今の状況のまま進んでいっていい訳がありません。今後、衣服からの人体への悪影響がゼロになるよう、汚染が無くせるように改善を進めていかなければ、苦しむ人がいなくなることはないでしょう。
命すら搾取されてしまう人々が少なくなるよう行動していきましょう。