動物の皮を加工した革は、ファッションやインテリアなどさまざまな革製品として使用されています。動物の「皮」を製品として使える「革」にするためには加工する必要があり、その作業の一つが鞣(なめ)しです。
鞣しとはどういった作業なのでしょうか?
今回は革の鞣しについて、主にクロム鞣しについての特徴やお手入れ方法などを紹介します。
この記事でわかること
そもそも「鞣し」とは?
「鞣し」は「なめし」と読みます。革を柔らかくすると書いて鞣し。読んで字のごとく「皮」を柔らかくして製品としての「革」にする加工のことです。
何もしていない状態のものを「皮」、鞣しをしたものを「革」と漢字を分けて区別しています。
動物の皮はとても丈夫ですが、そのままの状態で製品として使用してしまうと、乾燥して硬くなったり腐敗してしまったりと長い使用ができません。そのため、植物や薬品を使用して、長い期間使っていても変質しない「革」にするための加工を鞣しと呼びます。
鞣しの種類と特徴
鞣しの種類には、主に「タンニン鞣し」と「クロム鞣し」の二つがあります。
タンニン鞣し
植物性のタンニンを使用しておこなうのがタンニン鞣し。古くからある伝統的な方法です。水溶性の化合物であるタンニンには、皮に含まれる動物性たんぱく質と結合することで収縮させる働きがあります。
工程に手間がかかり期間も長くかかる工法ですが、丈夫で固めの仕上がりになるのが特徴です。
経年による色の変化を楽しみやすいのもタンニン鞣しをほどこした革製品の特性。日々のブラッシングやクリームでのお手入れは欠かせませんが、長く愛用し革を育てていく楽しみがあるのも、タンニン鞣しのよいところです。
クロム鞣し
手間がかかり期間の長いタンニン鞣しに代わり開発されたクロム鞣しは、クロム化合物を使用。巨大なドラム型洗濯機をガラガラと回して加工をおこないます。
出典:Amazon
クロム化合物と反応させることで、柔らかい仕上がりになるのが特徴。耐水性にも優れており、お手入れの手間がそれほど必要がないため扱いやすい革製品です。
クロム鞣しのメリットとデメリット
クロム鞣しのメリットとデメリットについて紹介します。
クロム鞣しのメリット
クロム鞣しは、タンニン鞣しに比べて短期間で仕上がります。クロム鞣しの革は柔らかく、伸縮性にも耐水性にも優れた仕上がりになるため、革製品としての加工がしやすいという点も大きなメリットでしょう。
経年による革の色の変化はあまりしません。その代わり、クロム化合物の影響で革自体が白っぽい仕上がりになるため、着色しやすいのが特徴のひとつ。また、安価で大量生産できる工法でもあります。
クロム鞣しのデメリット
クロムは金属性のため、人によってはアレルギー反応がでることがあるので注意が必要です。
また、タンニン鞣しに比べて経年による色の変化があまりないことは、革製品を楽しむにあたってのデメリットとも言えるでしょう。
クロム鞣しとタンニン鞣しの見分け方は?
クロム鞣しとタンニン鞣しを見ただけで見分けるのは至難の業ですが、それぞれの特徴を理解してチェックする方法を考えてみましょう。
臭いがするかどうか
自然素材のタンニンに比べ、クロムは化学物質なので鼻につくような臭いがすることがあります。そのため、臭いがするようならクロム鞣しである可能性が高いでしょう。
しかし、タンニン鞣しでもにおいがつく場合もあるため、臭いがするからといって一概にクロム鞣しであると断定はできません。
伸縮するかどうか
タンニン鞣しは固めの仕上がりになるため伸縮はあまりしませんが、クロム鞣しは柔らかく伸び縮みしやすい特徴があります。そのため、少し伸ばしてみて伸縮するようならクロム鞣しである可能性が高くなります。
ただし、タンニンでも柔らかく仕上げる方法はあるので、それだけでクロム鞣しであると断定するのは難しいでしょう。
その他にも、吸水性があるかどうか、傷がつきやすいかどうかなど、いくつか見分ける特徴はあります。しかし両方の工程を行う製品もあるため、見た目や特徴のみで断定することは難しいと言えます。
クロム鞣しの革の正しいお手入れ方法
どちらの鞣し方法で加工されていても、革製品のお手入れ方法自体にはそれほど変わりはありません。革製品の基本的なお手入れ方法を紹介します。
埃やゴミは、こまめに革用ブラシや柔らかい布で拭いて落とす
外出時に使った場合は、見えなくても埃やゴミが付着しています。帰宅後に、その都度柔らかい布などで拭き落とすことで、汚れが落ちにくくなることを防ぐことができます。
雨や水に濡れた場合は、柔らかい布で拭いてから陰干しする
革製品は水に弱いので、雨や水に濡れたら早めに柔らかい布で拭き取りましょう。陰干しをして湿気をしっかりと取ります。
革用クリームを薄めに塗って柔らかい布でよく拭く
普段のお手入れに加えて、定期的に革用クリームでのお手入れをおこないます。市販されている革用クリームを一つは常備しておきましょう。塗りすぎないように注意してください。
日々の手入れで落ちない汚れは革用クリーナーで丁寧に拭き取る
日々のお手入れをしていても落としきれない汚れがたまることもあります。汚れがたまったら、柔らかい布と革用クリーナーを使って丁寧に拭き取りましょう。気がついた時にすぐに対処できるように、革用クリームを常備しておくと安心です。
革用クリーナーでも落としきれない汚れは無理にこすったりせず、購入したショップやクリーニング店などの専門家に相談するのもひとつの方法です。
クロム鞣しはコバ磨きできないって本当?
コバ磨きとは
革の切り口のことをコバと呼びます。
コバ磨きとは革の切り口を磨くこと。特にレザークラフトを行う際には基本的な作業です。
革製品を使用しているとコバから傷んでくることがほとんどですが、コバ磨きをしっかりとして仕上げることで、コバが痛むのを予防することができます。
クロム鞣しのコバ磨きは難しい
クロム鞣しの革製品の場合は、革が柔らかいためにコバ磨きをするのはかなり難しい作業です。
そのため、クロム鞣しのコバ処理はコバ塗りという方法を行うのが一般的でしょう。工程は以下の通りです。
- コバに目止め液を塗り固める
- 乾いたら研磨する
- コバ塗りをする
コバ塗りとは、コバ処理剤を塗り表面を皮膜で多う処理方法です。クロム鞣しの柔らかい革製品でも、コバ塗りならしっかりとしたコバ処理が行えます。
まとめ
革のクロム鞣しについて紹介しました。
鞣し方法によって、革の仕上がりに違いがあります。たくさんの革製品を手に取ってみて、好みや用途に合わせ上手に選んでみましょう。