HushTug NOTE カルチャー 「借金地獄・農薬漬け・自殺」インドの綿花農家の現状の原因とは?

「借金地獄・農薬漬け・自殺」インドの綿花農家の現状の原因とは?

「借金地獄・農薬漬け・自殺」インドの綿花農家の現状の原因とは?

2017年12月3日

30分に1人。これが何の数字かご存知ですか?

インドの綿農家の人が自殺している人数を計算して出された数字です。信じられないような数字ですが、これは私達が着る”安い服”を作るために農家の人々が追い詰められていることを示しています。

現在は服の製造が海外で行われていることが多いため、身近に感じることがないのかもしれません。しかしそんな理由で、これらの現実に目を背けていいわけがありません。

一体何が原因で、インドの綿農家の人々がこんなにも酷い状況に陥っているのか。ファストファッションを着ている私達は知らなければいけません。

平和な時代も確かにあった

インドの子ども

出典;Asahi Shimbun DigitalKURKKU提供

昔からこんなに酷い状況だったわけではありません。

以前は天然の肥料と殺虫剤で栽培し、種を採って翌年に回しながら上手に栽培していたのです。殺虫剤こそ使っていましたが、肥料も天然だったためそこまで土壌が痩せることもありませんでした。

政府からの手助けで補助金や農民への融資もあり、生活できるくらいの稼ぎはあったと言います。子どもは学校に通い、大人は農場で働く。そんなごく自然な生活をすることもできていたのです。

しかし今はそのごく普通の生活すらできなくなってしまいました。

知られざるインドの現状

毒性

服の主な素材は綿(コットン)と化学繊維です。化学繊維は石油から作りますから、貴重な資源を無駄遣いしているのは明らかです。しかし「自然なもの」というイメージのあるコットンもその栽培の実態を考えてみると、あまりナチュラルとは言えません。

2016年にはインドの平均寿命は68歳でした。しかし綿栽培に携わっている人の平均寿命は、わずか35歳だと言われています。

それだけ綿栽培には体にとって毒になる部分があり、綿花は世界で最も毒性の高い作物の1つなのです。

農薬や殺虫剤は、飲んで自殺を図れるほど毒性の高いものですが、綿の生産過程では世界の農薬の18%、殺虫剤の25%が使用されているのです。この数字を見れば、綿農家の人がどれだけ「農薬」や「殺虫剤」の毒にまみれて仕事をしているのかが分かります。

綿花はもともと麻などに比べ害虫に弱いため、多くの農薬が必要になり、結果インドの人の寿命を30歳近く縮めています。

しかし綿栽培を辞めるわけにはいきません。それどころか以前より多く栽培しなければいけないのです。「早くて安い服」を支えるためには、安くてそこそこ品質のいい綿花を大量に収穫する必要があるので、化学肥料を大量に使用していきます。

そのために起きるインドの綿農家で農薬被害のことは、酷い時にはニュースになるほどなのです。

遺伝子組み換え綿のために状況悪化…

インドのこの状況を作り出したのは、遺伝子組み換えの綿のためだと言われています。

インドの綿は、そのほとんどがある会社=M社が開発したGM(遺伝子組み換え)綿です。現在、遺伝子組換え作物の種の世界シェアは90%以上はM社が占めています。

1996年に紹介された遺伝子組み換え綿である「Bt」綿は、農家の人々には夢のようないい種でした。

  • 殺虫成分が元々組み込まれており、害虫であるオオタバコガの幼虫から自らを守る。
    =殺虫剤の費用を減らせ、化学物質の散布が必要ないので環境にも優しい。
  • 収穫量も今までの5倍にもなる。

このように宣伝されていました。農家にとっては土地も守れ、自分たちの体にも優しく、そして収穫が増えれば収入も増える。いい事づくしの種だと思ったことでしょう。種の値段が今までの4倍で、借金をしてでも買う価値があると皆思ったそうです。

しかし、現実はそう上手くいきませんでした。
借金地獄
使用していく中で確かにオオタバコガの幼虫の被害はないですが、他の新たな害虫や立ち枯れ病が発生してしまったのです。その結果、大量の農薬や除草薬を撒かなければならず農家は経済的に大打撃を受けました。

その際に使用する除草剤は「ラウンドアップ」というGM種に合わせたものを使用しなければいけません。ラウンドアップはGM綿を開発したM社が販売するもので、今までよりも高額となり農家はさらに借金を重ねていったのです。

農薬を飲んでの自殺者が急増

多額のお金を借りたとしても、今までよりも収穫が増えるのなら返済できると思ってのことでしょう。

その結果はまさかの不作で、今までの収穫の1/4ほどになってしまったのです。そして元の種に戻そうにもそうはいきませんでした。なぜならインド政府の施策によって市場に出回る種のほとんどがBt種になっていたからです。
水

そして不作の原因は予想外の害虫被害もありますが、元々Bt綿で豊作にするためには水が大量に必要になることだったのです。

しかしインドの雨量は少ないため、水確保のために設備が必要になってきます。その設備が整ってい農場は4割もありません。この状況で豊作になるわけがないのです。

そして設備を整えようにもすでに借金地獄の農家が多く、結果Bt綿栽培農家では自殺者が急増していきました。除草剤「ラウンドアップ」を飲んで畑で自殺する人が跡を絶ちません。

インドの自殺者

出典;YouTube

インドの綿農家の年間自殺者は25万人にも上ります。

だいたいの人が農場で殺虫剤を飲んで命を絶つのです。30分に1人がそのように亡くなっているなんて、想像できますか?

除草剤・殺虫剤による被害も多発

自殺の道具になっている「除草剤・ラウンドアップ」は猛毒であり、マスクや手袋で厳重に防御することが必要になります。にもかかわらず、インドでは上の写真のようにマスクも手袋も付けずに除草剤を撒いているのです。これでは人体に影響がないわけがありません。

大量の殺虫剤のせいで農場が汚染されるだけでなく、村では先天異常を持って生まれる子供が増え、農場で働いてきた50歳前後の人にはガンが増えています。また脳腫瘍になる人が増え、村のそばには手術ができる脳外科ができるようになったのです。

農場で除草剤や殺虫剤を巻きながら吸い込んでしまったり、皮膚から取り込んでしまっているために起きていると考えられます。また空気中を漂い、農場のそばにいない人にも悪影響を及ぼしているのです。

⇒詳しい化学物質による人体影響を見る。

汚染され続ける土壌

土壌汚染

上記のような状況で綿栽培を行なっているのは、インドだけではありません。

一説によると、綿花の栽培に使う土地は世界の耕地面積の5%未満にも関わらず、全世界の農薬の20%が使われているそうです。大量に農薬を使えば当然土壌が汚染され、それはまわりまわって海に入り、地球環境自体が汚染されていくのです。

⇒詳しい排水による環境汚染。

なぜこんなにも栽培量が増えているのでしょうか。

綿は今日の衣服を作るために使用される繊維のおよそ半分を占めているため、服の生産量が増えれば増えるだけ、綿の生産も増えていくのです。その結果がインドの状況を作り出しています。

綿と表示されるラベルの真実

表示ラベル

さらに身近にあるものに衝撃的な真実がありました。

綿はファストファッションでよく使われる素材です。綿製品は生産・製造プロセスが複雑かつ複数の国境を超えるために、誰がどのように関わっているのかを知るのはとても難しいものになっています。

複雑な工程のため、途中でごまかす機会も多いと言われています。

そのため「綿100%」、「フェア・トレード製品(発展途上国の人々から不当な搾取をしない公正取引)」などの表示ラベルが付いている製品の中にも、実はニセモノが紛れ込んでいることがあるそうです。本当に100%使っているものもあるでしょうが、そうでないものもあると買おうか悩む人もいるでしょう。

また表示ラベルに「オーガニックコットン」と記載がない綿は、ほぼ100%遺伝子組み換えの綿花だと言われています。

オーガニックコットンとは

オーガニックコットン

表示ラベルを確認した際に、素材が「オーガニックコットン」のものだけ買うようにしている人もいるかと思います。

その理由として、オーガニックコットンは体にいい、肌に良さそうというイメージがあるからでしょう。値段も普通のコットンの倍以上することもありますし、高いものほどいいと考える人も多いでしょう。

しかし、オーガニックコットン。実は、普通のコットンと質はそこまで変わらないんです。これには衝撃を受ける人が多いでしょう。「同じ質でなんで値段がそんなに違うんだ?」そう思いますよね。

品質でないのなら、一体何が違うというのでしょうか?

コットンとオーガニックコットンの違い

違いは?

オーガニックコットンと普通のコットンの残留農薬を比べてみると、その量はほとんど変わりません。普通のコットンは栽培時に農薬を使っていますが、育てている時に使われた農薬は時間が経つとほとんど分解してしまい、最後の綿花に残っていることは割合的に少ないです。

つまり科学的にオーガニックコットンと普通のコットンを判別することはできないのです。

  • 質も変わらない。
  • 残留農薬も変わらない。

そうなると、高い金額を出してまでオーガニックコットンを買う理由がなくなってしまいます。安い方でいいと思う人も多いでしょう。

つまりオーガニックコットンが良い物だという認識は、「オーガニック」という言葉からのイメージだけなのです。

だとしたらなぜ手間ひまかけてまで、オーガニックコットンを作っているのでしょうか?

環境に優しいコットンだった

環境の優しい
オーガニックコットンは質を良くするために作られているのではなく、土地のため、地球環境の保全を目的として作られています。つまり、環境に優しいコットンなのです。

普通のコットンの栽培には農薬や化学肥料を使っていきます。そうすると地下水の汚染や微生物の消滅が起こり、土が痩せ細ってしまいます。痩せ細った土では良い作物は育ちません。後々は自分の首を絞めるようになってしまうのです。

それに対しオーガニックコットンは、農薬や肥料をできるだけ使わずに栽培していくので、土にも、環境にも、綿花農家の健康にもいい方法だと言えます。また二酸化炭素の削減効果も期待されています。

地球が元気を取り戻し、水も空気も大地も人も、生き生き生活できるのが理想でしょう。オーガニックコットンはその第一歩になるのではないでしょうか?

使う側として質だけを見たら普通のコットンでも十分です。しかし本当にそれでいいのかを1度考えてみてください。

普通のコットンの需要がなくなれば、自ずとオーガニックコットンの栽培が増えていくと思います。そうなれば、環境にも健康にもいいコットンだけが残っていき、値段、質以上に高価な買い物をしたと思えるかもしれません。

今後の対策

このような背景を受け、ファッション業界にも変化が起きつつあります。

オーガニックコットンで服作りを行う企業、生産者に正当な対価を支払うフェアトレード企業など、環境や生産者に配慮したものづくりを行う企業が増えつつあります。

現在はファストファッションを消耗品のように買い、欲求を満たしている人が多くいるでしょう。今までよりも多くのものを買えれば、自分が豊かになっていると思えます。

しかし、本当に豊かになっていますか?貧しくてもファッションが楽しめるというよりも、より人の気持ちを貧しくしているようにしか思えません。

安い服・高い服関係なしに気に入った服を長く大事に着る。それが本当の贅沢だと思います。そのような考えを持つ人が増えるよう、ファストファッションの考えを改めていく必要があるでしょう。

このままインドの人々の命をも搾取し続けていい訳がないのですから。