革製品として1番利用されているのは「牛革」です。しかし、牛革と言ってもさまざまな種類があるのはご存知でしょうか。
この記事では、牛革である「カーフスキン(カーフレザー)」の特徴や種類、手入れ方法について説明します。ぜひカーフスキンの魅力に触れてみてください。
この記事でわかること
カーフスキンとは?
カーフスキンはカーフレザーと呼ばれることもあり、生後6ヶ月以内の子牛の革のことをさします。カーフ素材の場合も子牛の牛革と考えて問題はありません。
カーフスキンの中でも生後3ヶ月までの子牛の革は「ベビーカーフ」と呼ばれ、とても希少な素材です。
小さな子牛の革のため、動物愛護の関係からも年々生産量が落ちています。そのため、今後はさらに希少価値が出てくるかもしれません。
元となる皮の重さにより、4.3kg以下のものを「ライトカーフ」、4.3kg以上のものを「ヘビーカーフ」と呼びます。
ライトカーフのほうが、より軽くて高級な素材です。
カーフスキンは上質な革のため、ハイブランドや高級革製品として使用されることも多い素材です。代表的な製品は、革小物やハンドバック、財布、高級靴などでしょう。
カーフスキン(カーフレザー)の特徴は?デメリットはある?
人間の肌で想像すると、大人より子供の方がキメ細かいですよね。子牛の革であるカーフスキンも、キメが細かく繊細で薄く柔らかい革です。また、手触りがとても滑らかなのも特徴のひとつ。子牛なので傷が少なく、見た目がとても美しいレザーです。
美しい見た目や手触りは、最高級な牛革だということを納得させてくれます。
カーフスキンだけでなく牛革全般にも言えますですが、組織が密なため部位による差が少ないのは牛革の大きな利点です。
しかし、キメ細かく繊細なためかえって傷つきやすいのはデメリットとも言えるでしょう。
繊細なため、少しこすっただけで傷がついてしまうこともあります。
キメ細かさや柔らかさが一番の魅力ですが、耐久性は基本的に低いため、手入れをおこたると長く愛用できなくなってしまうこともあります。
カーフスキン(カーフレザー)は8種類ある!それぞれの特徴や製造方法
カーフスキンは、加工や製造の違いで8つの種類に分けられています。
それぞれの特徴を見てみましょう。
ボックスカーフ
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ボックスカーフとは、生後3~6ヶ月の仔牛の革にクロムなめしした革のこと。クロムなめしとは、塩基性硫酸クロムと呼ばれる化学薬品を使ったなめしのことです。
ボックスカーフは、傷が付きにくくキレイな発色が特徴のひとつ。なめし液の中に浸ける時間が約2時間と短いので硬さが残ります。その反面、適度なハリがあり特殊なコーディングを施してあるため傷が付きにくいという特徴も。
光沢が非常に煌びやかでキレイな発色のため、スタイリッシュな印象なのはボックスカーフならではです。
他の革に比べると経年変化はあまり出ませんが、全くないわけではありません。完全に皮の表情を覆い隠していないので経年変化を楽しむことは十分できます。
また、くたびれた感じにならずお手入れが比較的しやすいのも特徴のひとつ。そのため、色あせない高級感を求める人には特に魅力のある革と言えるでしょう。
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ボックスカーフは、もともとドイツのタンナー・カールフロイデンベルク社製のカーフのみをさしていました。タンナーとは、革を加工する工場のことです。
それが次第に他社でも手掛けるようになりました。その結果、同様の品質を持つカーフの一般名称としてこの名が広く用いられるようになったのです。
アニリンカーフ
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アニリン仕上げが施されたカーフのことをアニリンカーフと言います。アニリン仕上げとは皮が革になるための加工の最終段階で、アニリン(酸性の水性合成)染料を使う仕上げをした革です。
アニリン仕上げは、原皮の銀面の模様を効果的に浮き出させ透明に仕上げられるため、原皮そのものの良し悪しがストレートに出る方法です。そのため、必然的にキズの少ないキメ細かい革にしか使われず、最も映えるのがカーフになります。
アニリンカーフの価値は、革そのものの上質さと深い発色なのです。
ただし、色アセ・色落ち・シミになりやすい特徴はデメリットと言えるでしょう。
ナポレオンカーフ
オイルをたっぷり含ませ、サンドペーパーで吟すり加工(ぎんすりかこう)をすることで起毛させたカーフのことをナポレオンカーフと言います。
ナポレオンカーフは独特の質感があり、オイルレザーとヌバックの両方の特徴を持っているレザーです。ヌメ革以上に経年変化をするので、半年ほどでも大きく表情を変えるのが大きな特徴でもあります。
本来の革のいい香りや革の質感を楽しむことができるため、革らしい革と言えますね。
また、その質感はしっとり手に吸い付くような特徴があり、他の革では体験できないもの。オイルを感じる質感ですが、手にオイルが付くことはありません。起毛しているので肌触りもよく、1度使用するとクセになる方も多いでしょう。
コノリーレザー
創業1878年、英国王室御用達の名門タンナー・コノリー社が最高級カーフを秘伝のなめし法で加工した革が、コノリーレザーです。
しかしコノリー社は2002年に皮革事業から撤退しています。
現在は、オーストラリアのレフラー社や英国のUK Hide社などが秘伝の鞣し法を引き継ぎコノリーレザーを供給していますが、コノリー社の時のものとは風合いが微妙に違っています。
コノリーレザーは表面に自然なシボがあり、耐久性と耐水性に富んでいるため、高級車のシートや内装皮革によく使われています。
イギリスの自動車メーカーであるロールスロイス、ベントレー、アストンマーチン、ジャガー、ローバーはもちろん、イタリアのフェラーリや日本でもトヨタ(レクサス)、日産(インフィニティ)など有名どころですね。
また、他には家具や時計ベルト、小物などにも使用され、極めて希少な皮革として珍重されています。
コードバン風カーフ
クロームでなめしたカーフの銀層を少し削り落として着色し、手作業でコードバン(馬革)に見えるような仕上げを施した革です。素材の質感を失わずに光沢を出しています。
スクラッチプルーフカーフ
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「スクラッチプルーフ」とは傷が付かないという意味で、その名の通り素材を生かしつつも傷がつきにくい加工をしてあるカーフのことをスクラッチプルーフカーフといいます。
カーフをクロームなめしして、染色時に特殊な液状の薬品を一緒に浸透させることにより、革のもともとの風合いを生かしつつ引っかき傷防止加工を施しています。
表面はマット調でサラリとした手触りであり、よく見るととても細かいシボがあります。
ベネチアンレザー
ベネチアンレザーは、ベネチアにほど近いサンタクローチェというところで開発されたレザーです。
この地で原皮の生産からなめし、染色まで行われることから名付けられています。
カーフをベジタブルタンニンなめしして、水染めという技法で職人の手で染めることにより、深みのある美しいムラ感を表現しているのが特徴です。
ヴェネチア・レザー
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ヴェネチア・レザーは、伸縮性と発色性に高い実力を発揮する門外不出の高級素材ベルルッティ(Berluti)のみが独占的に使用を許された門外不出の逸品です。入手ルートや製革工程は極秘事項になっています。
加工などの詳細は不明ですが、ほどよい柔らかさを保ちつつも容易に型崩れしない性質が大きな特徴。現在はカーフを使用していることが多いようですが、全てがカーフというわけではないようです。
カーフスキン(カーフレザー)を使用した製品
カーフスキンを使用した製品をいくつか紹介します。
キーケース
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カーフスキンを使ったキーケースです。写真は、モダンなシルエットと遊び心のあるカラーリングのパイピングが印象的な、ポールスミスのキーケース。ナチュラルな光沢があり、シンプルなデザインです。
長財布
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カーフスキンを使った製品で代表的なものといえば財布でしょう。
写真は、スターエンボスの型押しカーフスキンを使用したJIMMY CHOO(ジミーチュウ)の長財布です。個性的なデザインですが、型押しなのでそれほど気にならず、と年代を気にせず使えます。
出典:Amazon
こちらは、クロム鞣しをしたボックスカーフを使ったフジタカの長財布です。スーツのポケットにも入れやすいスリムタイプ。すっきりとしたデザインで大人の男性にもおすすめです。
バッグ
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バッグもカーフスキンを使った代表的な製品のひとつ。
写真は、コードバン風カーフを使ったショルダーバッグです。職人の手によって磨き上げられたレザーは美しい光沢を放ちます。適度な大きさでカジュアルにもクールにも使えるデザインは、男女問わずおすすめです。
カーフスキン(カーフレザー)は経年変化する?
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カーフスキンは、使い込むほどに革の味わいが深まる経年変化を楽しめるレザーです。長く愛用すればするほど変化をみせてくれるので、それがたまらないと感じている方もいるでしょう。
ただし、加工の仕方によっては経年変化しにくいカーフスキンもあります。鞣しの仕方やどのように仕上げているかによって、経年変化の深まり方には違いがあるのです。
好みの変化がある場合は、どのカーフスキンが好みの変化をするのか事前に知っておく必要があります。または何も知らずに購入し、どのような経年変化をたどるのかを楽しみにするのも良いかもしれませんね。
カーフスキンの中で1番経年変化しやすいのは、ナポレオンカーフです。短時間で変化を楽しみたい方に特におすすめですよ。
カーフスキン(カーフレザー)の手入れ方法
カーフは他の牛革と比べて繊細で柔らかいので、軽くひっかくだけでも傷がついてしまうことが多い革です。大切に扱って、できるだけ細かい傷がつかないよう気をつけて使っていきましょう。
ここではカーフスキンの手入れ方法について紹介していきます。
普段の手入れ
汚れやホコリがついた時には、乾いた柔らかい布などで拭き取るようにしてください。
カーフに限らず革は、汚れてから時間が経つと汚れ自体が落としにくくなってしまいます。早めに対処するのが、長持ちさせるコツです。
また水や高温に弱いので、水拭きはしないようにしましょう。必ず乾いた柔らかい布で行なってください。
ツヤがなくなった時の手入れ
使用してから1年ほど経つと、革表面のツヤがなくなっていることがあります。場合によっては、1年より短い期間でツヤがなくなることも。
ツヤがなかったり、乾燥していると感じたら手入れをしてあげましょう。まずは革専用の栄養クリームなどを塗り、潤いを補ってみてください。ただし、クリームの塗りすぎはカビなどの原因になってしまうので注意です。少量ずつ塗っていき適度な量を使用しましょう。
クリームを塗ることで、ツヤを出しひび割れを軽減していきます。頻繁に行う必要はありませんが、革の表面の状態によっておこないましょう。
カーフスキンは雨に濡れたらどうなる?
カーフスキンは、水に弱いレザーです。
すぐにシミになってしまうので、濡らさないように気をつけてください。雨の日には持ち歩かないのが懸命です。
もし濡れてしまった場合は、すぐに乾いた布で拭き取りましょう。その際には、ゴシゴシこすらずに優しく拭き取るようにしてください。強く擦ってしまうと、それだけで傷になってしまうことがあります。
また、水に弱いからと言って、濡れてしまった際にドライヤーや日光で乾かすのは厳禁です。日陰で自然乾燥をさせましょう。
お洒落をするなら最高級なカーフスキンを
最高級の牛革のカーフスキンを1度使用したら、その虜になること間違いなしです。
ぜひ最高級の良さを体感してみてください。
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