鞄や財布、小物など革製のアイテムは私たちにとって非常に身近なものです。また、革製のものは頑丈で長く使えますが、高価なものが多いという特徴もあります。
しかし、革製を謳っているのになぜか価格が安いものを見かけた事がありませんか?もしかすると、その革製の製品には「床革」というものが使われているかもしれません。
今回はそんな床革について。特徴や本革との違い、手入れ方法などをご紹介していきます。
この記事でわかること
床革とは?クロスハッチレザーとは違うもの?
出典:楽天市場
そもそも皮革とはいくつかの層が重なってできており、一番上(表面)をの層を銀面と言います。
その中で床革(とこがわ)とは、革の銀面を取り除いた「内側の層の部分」を指します。財布や小銭入れだと、床革のまま使われたりする場合もあります。
なぜこのような加工がされるかというと、2つの理由があります。
- 表面が滑らかなスムースレザー以外のスエードやヌバックの素材を作るため
- 強度や使いやすさを考慮し、革の厚みを調節するため
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床革は表面がざらざらとしていて、毛羽立ちやすいのでそのまま使われる事は少ないです。ちなみに、床革は皮革の種類や加工方法によって別の名前になる素材もあります。
では、床革に関係する「スプリットレザー」と「クロスハッチレザー」を見ていきましょう。
床革の加工:スプリットレザー
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スプリットレザーとは、ポリウレタンなどの樹脂で表面を加工した素材を言います。スプリット(split)とは「割る・分裂」など”分ける”という意味で、名の由来はそこから来ています。
皮革を銀面と床革に切り分ける際、厚みを同じにするために機械で切り分ける(split)のです。
そうすると、銀面が取り除かれた分強度が落ちてしまうので、繊維の強度を上げるために樹脂で表面を覆う加工が施されます。
スプリットレザーは牛革が使用され、わざと毛羽立たせてスエード調やベロア調にして使われる事が多いです。
床革の加工:クロスハッチレザー
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クロスハッチレザーも牛床革が使われ、細かい筋状の型押しがされた床革をポリウレタンでコーティングした素材を言います。
サフィアノレザーとも呼ばれています。型押しすることによってハリのある固めの革になり、傷が付きづらい・目立ちにくいメリットがあります。
ポリウレタン加工により撥水効果もあります。突然の雨などで水が付いても、すぐ拭き取れば水シミになりにくく革初心者にも扱いやすいですよ。
牛床革は「床革」の種類の一つなので、床革・スプリットレザー・クロスハッチレザー(サフィアノレザー)は同じ分類になります。違いはありません。
本革と床革の違いは?
本革と床革の違いは、見た目だけで判断するのは難しいです。「買ってみたけどイメージと違った」というケースもゼロではありません。
革製品を購入する前に、まずは本革と床革、双方の具体的な特徴を知ることから始めましょう。それを理解することで、どちらが好みや用途に合うのか考えやすくなりますよ。
では、本革と床革それぞれのメリット・デメリットについてご紹介していきます。
本革
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本革は、動物の皮を元にして作られた革の事をいいます。床革と違うのは、銀面がついているか・いないかです。
そもそも生き物の皮は、そのままにしておくと硬化したり腐敗したりするため、鞣し(なめし)という作業を行う必要があります。
加工方法は、主に”植物タンニン鞣し”か”薬物のクロム鞣し”に分類されます。この作業によって皮から革へ変化した素材は腐敗せず、耐久性・柔軟性なども強化することができるのです。
一般的に、動物の革の表面を使っているものが本革製のものと言われています。つるつるとした手触りや美しい光沢が特徴であり、その革の元となった動物それぞれの皮膚感があります。
本革のメリット
本革の具体的なメリットを4つご紹介します。
1.革製品特有の風合い、個性を楽しむ事が出来る
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手触りや質感など、上品さ・高級感は本革の大きな魅力です。使い込むほど経年変化がおき、独特の味が出てきます。
経年変化はエイジングと呼び、使用頻度や期間によって革の表情が変化することを言います。
分かりやすいのは革の色で、だんだん深みのある飴色になっていくのを楽しみにする愛用者が多いです。
鞣しや加工によっては、エイジングしない革もあるのでご注意ください。
2.耐久性があり丈夫なので、手入れ次第で長く使える
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本革は手入れをすれば、長期間使い続けることができます。
一般的に本革の寿命は10年と言われており、それだけでも十分長いですが、扱い方や手入れに気を付けていればもっと長持ちすることもあります。
使っているうちに付く傷やシミ、それも革製品の醍醐味のひとつ。少し値段が高くても、自分だけの一点ものに育てる楽しさにハマる人は多いです。
3.ゴム製より熱に強く、通気性が良い
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仕事で外をよく歩く方にとっては、ソール(靴の底)も重要な部分です。ゴム製と比較すると、本革は熱に強く、ソールが革なら高温のアスファルトを歩いても溶けません。
ゴム製の場合、ゴムが劣化していると溶けることがあります。仕事に支障が出て、車の運転も危険です。
また、ゴム製は通気性が悪く、靴のにおいの原因になることも。本革は通気性が良く、歩くたびに空気が抜けて蒸れづらくなっています。
4.本革特有のにおいがある
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鞣しの際に使われた染料などが革に染み込んで、独特なにおいがします。
においは好みが分かれるので、気になる方へ「床革のにおいを和らげる方法」をまとめました。後ほどご説明しますね!
また、新品の本革なのに傷のような線を見つけることがあります。それは、動物自身が付けた傷や血筋などです。血筋とは、血管の跡のことで枝分かれした細かい線として現れます。
これらは皮革の品質を左右するものではなく、味として楽しむもの。ひとつとして同じものはない、唯一無二である本革の証なのです。
本革のデメリット
次に、本革のデメリットをご紹介します。
1.床革より価格が高い
なぜ価格に差が出るかというと、本革と床革では完成するまでの時間や手間が異なるからです。
そのため床革の方が安価になりますが「安いからダメ」という訳ではなく、それぞれの特徴を踏まえて自分が使いやすい方を選ぶことが大切です。
例えば、手入れのしやすさだったら床革の方がおすすめですし、デザインにこだわりがありずっと使いたいなら本革、と考えると選びやすくなりますね。
2.水や乾燥に弱い
革に水は大敵です。革に水が付くと、吸水してシミになったり型崩れを起こしたりする可能性があります。
乾燥にも注意が必要で、手入れしないまま使っていると乾燥してひび割れを起こしてしまいます。
水(雨)や汗対策には防水スプレーを、乾燥には保革クリームといった定期的なケアは必須です。以下の記事を参考になさってくださいね。
3.カビが生えやすい
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本革はとてもデリケートで、湿度の高い(通気性の悪い)場所への保管・保革クリームの塗りすぎなどでカビが生えることがあります。
靴を収納するための下駄箱ですが、空気の流れがあまり良くないので気を付けましょう。箱やビニール袋に入れて密閉するとあっという間にカビだらけになります。
4.色移りなどによる退色がある
タンニン鞣しの本革はエイジングで飴色に変化しますが、ここでご説明するのはそれとは違う”退色”についてです。
革製品はヌメ革のような本来の色を活かすものもあれば、着色するものもあり、主に「顔料仕上げ」と「染色仕上げ」に分けられます。
- 顔料仕上げ:革の表面に色を塗る
- 染料仕上げ:革の内部に色を染み込ませる
退色しやすいのは染料仕上げの方です。紫外線の刺激や雨や汗の水分が付くなどの理由から、染料の酸化が起きるためです。
また、「クロスで磨いていたら色移りした」というように摩擦で色移りする場合もあります。わずかですが色が抜けるので、繰り返すと退色してしまいます。
床革
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床革は毛羽立ったざらざらした手触りが特徴です。そのままではなく、樹脂などで表面を加工したり毛羽立たせたりして使われる事が一般的です。
起毛の柔らかい質感から、レザークラフトの裏張りにも用いられやすい素材になります。
床革のメリット
まずは床革のメリットをご説明します。
価格が安く手に入れやすい
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先ほども触れましたが、本革よりコストを削減できるのが床革です。革の一部なので完成イメージがしやすく、レザークラフトの試作品に利用する人もいます。
サンプルによって修正点をチェックできるので、職人もユーザーも満足度の高い作品づくりに繋がります。
加工されているものの一部は撥水効果がある
ある程度の撥水効果があるので、外出の多い仕事なら床革の方が向いているでしょう。
注意点として、スエードなどの起毛皮革はクリーム状のケア用品はべたついて起毛が寝てしまうということ。
そのため、スプレータイプで保革すると良いですよ。スエードの手入れ方法をまとめた記事もありますので、ぜひご覧ください。
起毛で傷が付きにくく目立ちにくい
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起毛がクッションとなり、少し擦ったくらいなら傷は付きません。もし擦ってしまっても、ブラッシングにより目立たなくなります。
しかし、革の状態が悪いと傷が付きやすくテカリも出てきます。毛が抜けていないか、毛並みが悪くないかなど、定期的にチェックしましょう。
床革のデメリット
次に、床革のデメリットについてです。
本革ほど丈夫でない
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加工で補強されているとはいえ、層が削がれている分本革よりも耐久性は低いです。
しかし、そのおかげで床革には「軽い・薄い」という特徴があります。本革と比べれば強度は低いですが、使う人によっては利点ですね。
樹脂などで表面加工がしてあるので経年変化がおきない
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ずっと使っていても革の色や質感はほぼ変わらないため、エイジングを楽しみたいという方にはあまり向いておりません。
逆に言えば、きちんと手入れすれば新品時の見た目をキープできるということです。一目ぼれした商品を購入するなら変化の少ない床革がおすすめです。
熱に弱い
樹脂は熱にあまり強くない性質なので、夏場は特に注意しなければなりません。暑さで樹脂が溶けて、べたつくことがあります。
置き場所を窓辺にしていませんか?直射日光が当たる場所は避けて保管してください。
起毛は汚れやすい
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樹脂でコーティングされていない素材は汚れが付きやすいです。ポーチ・財布・スマホケースなど、手に触れる機会の多いものほど汚れが蓄積します。
起毛についた汚れは落としづらいので、できるだけ早くクリーナーを使って綺麗にしましょう。
床革のお手入れ方法とは?
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表面が樹脂などで加工されたスプリットレザーと呼ばれる床革は、基本的にクリームやオイルでのお手入れは不要です。
馬毛ブラシで丁寧にブラッシングし、表面に付着した塵や埃などを取る程度のお手入れで十分です。
床革のままで加工してない物に関しては、専用のクリームでお手入れが出来ます。
床革が毛羽立ってきたら、指や布を使って毛羽立ちをそっと抑えるようにクリームを塗り広げてください。あとは風通しの良い日陰で乾かせば完了です。
またスエード調やベロア調のものなどは補色をしたり、防水スプレーをかける事によって長く使う事が出来ます。
床革の匂いを和らげる方法3つ
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本革や床革には、革製品独特のにおいがあります。
鞣し剤を使わない合皮にはにおいはありませんので、本革か合皮か判断するときの判断材料になる場合もあります。
(中には合皮もにおいがするものがありますが、接着剤のにおいなので要因は違います。)
時間が経てばだんだん落ち着いてきますが、新しいものだとにおいがきついと感じる方もいらっしゃるでしょう。
できればにおいを気にせずに気持ちよく使いたいですよね。そんな床革のにおいが気になる方へ、3つの和らげる方法をご紹介していきます。
1.風通しの良い所で陰干しする
紫外線には消臭・除菌効果があります。しかし、革にとって直射日光はダメージとなるので当たらない所で陰干ししましょう。
他のポイントとして、湿度が高くないカラッとした気候・風通しの良い場所を選ぶとより効果的です。一度でにおいが消えない場合は、陰干しを数回繰り返してみてください。
2.重曹を使う
掃除用品として有名な重曹には、吸湿・消臭効果があります。湿度やカビなどのお悩みも解決できるので、革製品とも相性がいいんですよ。
準備するもの
- 重曹
- 通気性のある小袋:空のお茶パックで大丈夫です
- スプーン
- 輪ゴム
- 革製品がすっぽり入る大きいビニール袋
ビニール袋はしっかり密閉できるよう、口が縛れるサイズにしてください。
重曹でにおいを和らげる手順
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- 小袋に重曹を入れて、粉が出てこないように口を輪ゴムで止めます。
- 大きめのビニール袋に革製品をしまい、その中に重曹の小袋を一緒に入れます。
- 2~3日放置したら完了です。
時間を要するのですぐに使うことはできませんが、重曹の作用でにおいが和らげられます。小袋を増やせば効果が高まります。
こちらの記事にも重曹を使ったにおい消しの方法が載っていますので、参考になさってくださいね。
3.クリーニングに出す
床革をスウェード調やベロア調にしたものであれば、クリーニングを引き受けてくれる業者もあります。心配な方は、業者に連絡をとって相談してみましょう。
自宅で行うよりコストや時間はかかりますが、においを和らげるだけでなく、革製品の汚れを落として保革の手入れまでばっちりです。
デリケートな革製品だからこそ、安心して任せられる点は嬉しいですね。一部ですが、以下のようなクリーニング業者があります。
- 靴専科:靴やバッグの修理もしてくれます。他にもサービスが充実しており、配送での依頼も可能です。
- 革水:特許取得のレザーサプリメントを提供しており、返却後のケアまで配慮されています。
- KOBA:歴史も実績もある業者で、選ばれた職人が丁寧な作業で革を蘇らせてくれます。
おすすめの床革アイテム4選!
床革の特徴などが分かったところで、どんなアイテムがあるのか見てみましょう。ここでは、床革を使ったおすすめなアイテムを紹介します。
1.バッグ
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バッグの場合は、床革に樹脂などで加工を施したスプリットレザーがおすすめです。
撥水加工されたものは水に強く、本革より手入れをしなくていいですし簡単です。
忙しくて手入れに時間がかけられない方にはおすすめの一品。
また、床革を毛羽立たせてスウェード調にしたものも普段使いのバッグとしておしゃれですよ。
2.スマホケース
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スマホケースに床革を加工して使っているものは沢山あります。サイズが大きすぎないので、レザークラフトでもチャレンジする人が増えています。
スマホケースは濡れやすいですし、触れる機会が多いので消耗は早いかもしれません。いずれは買い替えると考えても、お手入れが楽な床革製がおすすめです。
手軽さを知ると、買い替えでまた床革にするという人も少なくないようです。
3.小銭入れ
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小銭入れにはスウェード調にした床革製のものがおすすめです。あまり濡れる事もないので、床革製でも長持ちする傾向にあります。
また、ハンドクラフト(手作り)風のデザインはオシャレなものが多く、他の人と被りたくないという方にはぴったりです。
男性が使うイメージかもしれませんが、女性向けの可愛いデザインや色も発売されています。また、アメカジファッションにぴったりなので、ラフなコーディネートでも違和感なく合わせられますよ。
4.小物入れ
出典:楽天市場
床革をスウェード調にして作られた小物入れは、どんな家具にも馴染むのでおすすめです。価格も安く、手軽に手に入れる事が出来ます。
こちらもレザークラフトで簡単に作れます。必要な道具も少ないため初心者向けです。もし興味のある方は、こちらの記事からどうぞ。
既製品も素敵ですが、自分で選んだ素材の一点物を作るのも楽しそうですね。
まとめ
出展:Creema
今回は床革についてご紹介していきました。
床革は基本的には加工をして利用されるアイテムです。いろいろな床革の特徴を理解すれば非常に使いやすいアイテムになります。
ただ、本革と勘違いして購入してしまうと本革特有の風合いやエイジングを楽しむ事が出来ずがっかりしてしまうかもしれません。
革製の製品を購入する際は、素材をよく確認する様に注意しましょう。