毎日手に取って使うことで、色の変化や重厚な艶が出てくるエイジング(経年変化)が楽しめる本革。
きちんとした手入れを行うことで、生涯にわたってエイジングを楽しむ事ができます。
今回は革製品の手入れについて、汚れの落とし方・必要な道具・正しい頻度などについて色々と調べてみました。
エイジングについては、以下の記事をご一読ください。
この記事でわかること
革製品の分類
革製品は、大きく分けると「合成皮革」と「本革」に分類されます。
どちらが良い悪いという訳ではなく、それぞれの特徴や長所短所を知ることで自分が好む方を選ぶことがポイントです。
合成皮革
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合成皮革とは、人工的に作られた見た目が皮革そっくりの素材を指しています。
型押しでクロコダイル(ワニ革)などのエキゾチックレザーを模したものもあります。
合成樹脂で布地をコーティングすることで、撥水性が高く傷や汚れが付きづらくなっています。
デメリットとしては、樹脂の劣化が早いので、寿命は2~3年と短い点が挙げられます。
本革の醍醐味である、エイジングは楽しめません。
しかし、本革より安価ですし、軽量で手入れがしやすいのでたくさんの商品に取り入れられ、広く普及しています。
本革
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動物の皮を加工する本革の歴史はとても長いです。
原皮(げんぴ)となる動物はメジャーなもので約13種、さらに鞣し(なめし)方法が約4種、仕上げ加工が10種以上もあります。
手間と時間をかけて作られ、しなやかさがあり耐久性も高くなっているので、10年以上使い続けることができます。
鞣し方法によっては、革の成長も楽しめて愛着がわいてきますよ。
馴染んできた時のフィット感や、上品なツヤも魅力です。
傷に強い・撥水性がある・豊富なオイルなど、革によって個性があります。
革製品すべてに共通しているのは、水(汗)に弱いこととデリケートなこと。
防水スプレーで保護したり、小物であればバッグに収納したりして気を付けましょう。
革用クリームの分類
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各メーカーから、いろいろな保革クリームが販売されています。
ただ塗ればいいという訳ではなく、革の質を落とさないよう成分を確認することが大切です。
成分
保革クリームの主な成分は「水・油脂・ロウ」です。
水はクリーム自体に柔らかさを出すため、油脂は革を柔らかくするため、ロウはツヤを出す役割を持っています。
配合率などは製品ごとに違い、さらに以下の成分がプラスされていることがあります。
- ラノリン:革の水分と油分のバランスを整える。
- ミツロウ:保湿力が高く、革にしっとり感を持たせる。
- ワセリン:表面をコーティングして、傷や乾燥から保護する。
- ホホバオイル:革に潤いを与え、汚れを浮き出たせてくれる。
「なぜ水と油が混ざるの?」と思う人もいるかもしれませんが、そのために”有機溶剤”という化合物を使って混ぜています。
しかし、これはあまり革に良くない成分とされ、使いづらい場合は有機溶剤不使用のクリームもありますよ。
ミンクオイル・シール(あざらし)オイル・マスタングペーストも、動物から採れる成分のため革に馴染みやすいです。
形状
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先ほど、成分の配合率に違いがあることをお伝えしましたが、形状も同じことが言えます。
一番のポイントは「水と油脂」で、この分量で形状がほぼ決まると言っていいでしょう。
油脂は、最初は固形でも指で触ったり温かい場所で保管したりすると、柔らかくなる作用があります。
水が多ければ液状・ゲル状で浸透しやすく、少なければ固形寄りで伸ばしづらい・浸透しにくくなります。
水分が入っていないクリームを”油性クリーム”と言い、革に浸透しづらいですが美しいツヤが出せるのです。
ロウと油脂だけの油性クリームとよく比べられるのが”乳化性クリーム”で、ツヤは油性に劣るものの、水分と栄養分が豊富です。
効果
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クリームの効果は、おおまかに分けると「保湿」と「ツヤ」の2つになります。
一方に特化したものか、双方を併せ持ったクリームか、お好きな方を選んでいただいて問題ありません。
例えば、マットに仕上げたいなら保湿メインのクリームにすることで、革が持つ自然な光沢を楽しめます。
「革靴を光らせたい」「高級感のある質感が好み」という方は、ツヤが出るクリームが適しています。
靴をピカピカにするワックスやポリッシュは、水分が少なくて、油分またはロウが多めに入っている傾向です。
ツヤ出しに重点を置いているクリームは、潤い成分が不足しやすい可能性があります。
革の様子を見て、必要なら栄養を与えるクリームと併用した方がいいかもしれません。
馴染ませ方
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キレイに馴染ませるには、薄くムラなく塗った後乾拭きして、時間を置きましょう。
まず均等に塗れないと、過剰なクリームをエサにカビが生えたり、エイジングする革は色ムラの原因になったりします。
うまく塗るには、以下の方法があります。
- 馬毛ブラシよりも毛質が固めな、豚毛ブラシで仕上げる。
- 細かい部分は、ペネトレイトブラシを使う。
- バッグなど塗る範囲が広いなら、スポンジ型がおすすめ。
馴染ませる時間は明確に決まっておらず、20分前後~一晩と様々です。
革の手入れを繰り返しながら、お好きな馴染ませ時間を見つけてみてください。
ブラシの使い分け
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保革クリームを使うときの注意点
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過剰なクリームは革に悪影響なのは、革の通気性を妨げることも挙げられます。
それは重ね塗りをした時にみられやすく、クリームに含まれる「ロウ」が一因です。
ロウは、革の表面をコーティングすることでツヤを出すため、たくさん塗り過ぎると空気の通り道を塞いでしまうのです。
また、古いクリームを落とさないまま、新しいクリームを塗るのも重ね塗りと似た状況です。
定期的な手入れをする時は、目立つ汚れが無くても、古いクリームをクリーナーで拭き取ってから手入れしましょう。
保革クリームの代用品
保革クリームの代用品として、ニベアクリームが使うことができます。
元々動物の皮から作られた素材なので、人の肌と似ており、有効成分も似ているという訳です。
ニベアには香料が入っていますが、それが気にならなければ試してみてはいかがでしょうか。
しかし、あくまで代用品なので、応急処置やクリームの在庫が無いときなど、条件付きにしましょう。
革と相性が悪いとシミになるため、まず目立たない所でテストしてから使ってください。
革製品を手入れしないとどうなる?
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本革の手入れを怠るとどうなってしまうのでしょうか。革製品の革も人間の革と同じで傷んでしまいます。
- 乾燥することで革が硬く、皺やひび割れが生じる。
- カサカサになって、美しい光沢が失われる。
- 革製品の縫い目や、角などがすり減ったりする。
- 水や汗にぬれた箇所がシミ、カビとなってしまう。
- 起毛皮革の場合、毛が寝たり抜けたりする。
- 汚れが蓄積して、落としづらくなる。
人間の肌と同じで、手入れを怠っていると劣化してしまいます。
さらに劣化が進むと、専門の修理業者でなければ対応できなくなるかもしれません。
そうなる前に、革の変化に合わせて正しい手入れをすることが大切なのです。
革製品の手入れの頻度は?
革製品の手入れ、どのくらいの頻度で行えばいいでしょうか。
まず、手入れは「毎日行うこと」と「定期的に行うこと」に分けられます。
毎日の手入れ
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目立った汚れがなければ、ブラッシング(または柔らかい布で乾拭き)のみで大丈夫です。
埃は水分を吸って、革へダメージを与えるのでキレイにしましょう。
新品を購入し、使う前に防水スプレーを噴霧するのもおすすめです。
防水スプレーは水分だけでなく汚れを付きにくくする効果があり、革の良い状態を保ちやすくなります。
革靴であれば、シューキーパーを入れるとブラッシングがスムーズに。
保管場所は風通しの良い日陰がベストです。扉付きの靴箱は通気性が悪くなるのでご注意ください。
定期的な手入れ
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日々持ち歩く財布や手帳、たまに使うバックなどと使う頻度によっても違ってきます。目安は「革が乾燥していると感じた時」です。
- 触れた時のしっとり感がない。
- カサカサ、パサパサした見た目。
- 隅(角)の色が薄くなっている。
- 細かいシワが無数にある。
これらの兆候があれば、乾燥気味ということ。ただ、乾燥を感じなくても6週間から9週間に一度位、季節の変わり目に手入れを行うといいですね。
傷みやすい・汚れやすい場所
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定期的な手入れには、革の汚れや痛みもケアする必要もあります。
四隅・ポケットのフタ・財布の笹マチなどの、よく曲げ伸ばしする部分は傷みが早いです。
特に、ハリのある硬い革は、クリームが馴染んで柔らかくなるまではひび割れに気を付けましょう。
また、バッグの持ち手や財布の中心付近は、手で持つことで油分の心配はなくとも、皮脂や汗が移って汚れやすい部分です。
一番分かりやすいのは黒ずみで、早めに対処をすればクリーナーでキレイに落とすことができます。
手入れや油分がエイジングに与える影響
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エイジングは、油分が多いと早く進みます。
そのため、手でよく触れる場所とそうでない場所で、エイジングに差が出てくることがあるのです。
「エイジングを均等にする」という意味で、部分的な手入れではなく、全体にクリームを塗るケア方法も。
しかし、過剰な油分はべたつきやカビの原因になるため、革の状態をチェックすることは忘れないようにしましょう。
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バッグなら、ハンドルカバーを付けたりスカーフを巻いたりすれば、エイジングの差以外に汚れも付きにくくできます。
他に、紫外線の影響を受けた場合でもエイジングが早まります。
日光浴には、色ムラになりにくい・浮き出た油分でコーティングされる・シミが目立たなくなるというメリットがあります。
ただ、間違ったやり方は失敗に繋がるので、以下の記事をご参考になさってください。
革製品の手入れの方法/手順
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エイジングを楽しむためにはどのような方法で手入れをすればいいか、ここで説明しますね。
準備するもの
- 馬毛ブラシ
- クロス(古くなったTシャツでもOK)
- 革用クリーナー
- 革製品用のクリーム(栄養と油分を補給し、乾燥を防ぐ)
- 防水スプレー
残量が十分で、道具の破損などがなければ手入れを始めましょう。
手入れの方法 / 手順
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革製品は、適切な手入れを行うことで、使うたびに手になじみ、色合いが変わり艶も出てきます。
- ブラッシングで埃や汚れ(ごみがたまりやすい縫い目など)を取り去り、ブラシで落とせなかった汚れは布で拭き取る。
- 少量の革用クリーナーを布に取り、全体の汚れを落とす。
- 乾拭きをして余分なクリーナーを拭き取る。
- 革専用のクリームを指や布に取り、薄くのばす。
- 布で乾拭きをしながら、余分なクリームを取り除く。
- 風通しの良い日陰で、時間をかけてゆっくりと自然乾燥させる。
- 防水スプレーをかけて、乾燥させたら完了。
手入れが終わったら、直射日光が当たらない場所で保管しましょう。
「6週間置きに手入れをしているから」と安心してはいけません。
革は水分に弱く、水にぬれてしまった場合、速やかに乾かすようにしないと水シミのもとになります。
すぐに水を吸い取るよう布を押し付けながら取り除き、陰干しで自然乾燥します。
乾燥させるときにクリームをなじませるようにつけてもいいですね。
色落ちには補色剤
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染色や加工方法によって、色落ちしやすい革があります。
素材の風合いを活かしたヌメ革や、硬い革を柔らかくする加工が施されたものなどに見られます。
さらに、「水(湿気)」と「摩擦」が絡むと色が抜けやすくなり、使ううちに革の色が変化してくるのです。
グラデーションで楽しむ一方、どうしても気になる方は色付きクリームが使えます。
有名ブランドから様々な補色剤が販売されていますので、似た色を探すか調合して似た色を作るか、よく検討しましょう。
色の違う革製品を複数お持ちの方は、その時に使うブラシは補色剤専用にして、普段の手入れ用ブラシとは別にしてください。
革製品の手入れで注意すること
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大切だからといって手をかけすぎると、逆に革を傷める結果に。
例えば、過剰な保革クリームは革を柔らかくして型崩れを起こしたりカビが発生しやすくなったりします。
革の魅力のひとつである光沢もなくなり、べたついた見た目で汚れも付きやすくなるのです。
伸びが良いクリームがほとんどなので、ごく少量を意識しましょう。
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また、防水スプレーを革製品の近くで噴霧するとシミやムラになる可能性があります。
20~30㎝離れた場所から全体にかけるように噴霧してください。
オイルが豊富な革に使う場合は、表面を乾拭きしてオイルを拭き取ってからにします。
そのまま噴霧すると、スプレーの成分が浮いてしまいオイルと混じってベタベタに。
もしそうなったら、しっかり乾燥するまで待ち、布でよく乾拭きをすれば大丈夫です。
水拭きはしていいの?
結果から言うと、水拭き自体に問題はありません。
革と水の相性が悪いとはいえ、水気を硬く絞った布で落とせる汚れもあるからです。
注意したいのは、革の色が変わるほど水気を含ませないことと、しっかり乾燥させること。
乾燥した後は革がカサついているので、保革クリームを薄く塗って馴染ませます。
水拭きは、馬毛ブラシで落とせない汚れを拭き取れても、皮脂汚れまでは落とせません。
汚れを蓄積させないためにも、水拭きよりクリーナーの方がおすすめです。
アフターケアの有無
出展:ココマイスター
革製品は、買ってからの取り扱いで寿命の長さが左右され、アフターケアがとても重要です。
なので、革製品を選ぶにあたって、アフターサービスがあるかどうかもポイントのひとつ。
革の保湿や、汚れを落とすサービスを無償(※)で行ってくれるお店にすれば、初心者でもケア道具に慣れるまで安心できますね。
※期限や回数については、販売元にお問い合わせください。
また、アフターケアが充実するお店は、破損やパーツの不具合にも速やかに対処してもらえるでしょう。
革製品を正しい頻度で手入れしよう
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毎日使うだけでも、手の油脂がその革製品に染み込み、自分だけの風合いを生み出していくエイジング。
エイジングは、毎日使っていれば何もしなくても出てくるものです。
しかし、適切な手入れをする事で、革製品が均一にエイジングされていきます。
お気に入りの本革製品。愛情を持って手入れをして、自分だけの色合い・艶などの表情を楽しんで下さい。