動物の皮をなめし、皮から革へ変化させて作るレザーアイテム。
使用する原料や薬剤、かかった時間、加工方法によってできあがりや名称が異なります。その中の「シュリンクレザー」という革を聞いたことがありますか?シュリンクレザーは、耐久性があり傷が付きにくいなどのメリットが多く、世界中で取り入れられているレザーです。
今回は、シュリンクレザーの手入れ方法と使用時の注意点を紹介します。
シュリンクレザー とは?
牛・豚・馬などの未加工の皮は「原皮(げんぴ)」といいます。その原皮をなめして加工して仕上げた革の種類は、数十種類と言われています。たとえば、ヌメ革・ガラスレザー・型押しなど。シュリンクレザーも、原皮をなめして加工した革のひとつです。
シュリンクレザーってどんな革?
出展:Alt81
シュリンクとは、英語で「縮む」という意味。シュリングレザーとは、革の銀面(表面)にシワをつける加工方法のことです。革の用語に「シボ」があります。「シボ」は表面処理のひとつで、ヒョウメンにシワ模様をつけることですが、シボをより目立たせたものがシュリンクレザーと呼ばれています
収縮するのは銀面のみで、加工時に使用する収縮剤の強さによってシワの密度が変わります。革の密度は高くなりますが、別の加工によって表面はなめらかになるのが特徴のひとつです。
加工方法について紹介してきました、
ここからは、シュリンクレザーが好まれる具体的な理由について解説しましょう。人気の理由のひとつに使い心地の良さがあげられます。
シュリンクレザーのメリット
- 耐久性があり、傷が付きにくい。
- 持久力があり、持ちが良い。
- 素材感が出てデザイン性アップ。
- 革にコシがある。
一番のメリットは、柔らかさがありながら強度があること。そして傷が付きにくいことです。そのため、長持ちすることを優先する場合には、シュリンクレザーを選ぶのがおすすめです。
体重がかかるソファ、毎日持ち歩く財布やスマートフォン、左右に引っ張られるベルトなど、シュリンクレザーはさまざまなものに使用されています。他のレザーアイテムと比較しても幅広い商品展開でしょう。
シュリンクレザーのメリットをあげましたが、反対にデメリットもあります。「注意点」として後ほど紹介しますね。
シュリンクレザーと型押しレザーの違い
出展:RIA CREATION
画像の財布はシュリンクレザーのように見えますが、実は違います。シュリンクレザー風の型押しレザーです。ただ似せるために型押しにしているわけではありません。それぞれに長所があるため、あえて型押しを選ぶ人も多くいます。
シュリンク風の型押しレザーは、主に”ソフトレザー”を使用。そのため、シュリンクレザーにはない特徴を持っています。
シュリンク型押しレザーの特徴
型押しレザーのメリットとデメリットを紹介します。
- メリット(1):ソフトレザーならではのやわらかさ
- メリット(2):軽いのでバッグに向いている
- デメリット(1):銀面(表面)に加工がないので傷が付きやすい
- デメリット(2):型押しにより傷等が隠せるので、革の質が落ちる場合もある
シュリンク型押しレザーは、通常のシュリンクレザーよりも優しいソフトな使い心地です。素材自体がとても軽いという特徴もあり、毎日持ち歩きたくなる人も多いでしょう。
デメリットは、防水スプレーや保革クリームで革を保護したり、定期的なケアを行ったりすれば、ある程度ダメージを減らすことができます。
革の質が落ちる点に不安になるかもしれませんが、決して粗悪品を使用しているわけではありません。厳選された革がほとんどです。
原皮(革に加工される前の皮)は動物によってさまざまで、全く同じ革はありません。商品ごとの個性を楽しんで選んでみましょう。
シュリンクレザーの手入れ方法
革製品をお持ちの方なら持っていることが多い、手入れ道具。どの革に使用するにも基本は変わりませんが、メーカーやブランドによって性質に特徴があります。ブラシの形状は?保湿剤はクリーム状かオイルタイプか?など確認しましょう。
「どれにすればいいか決められない……」という方は、レザーショップの店員さんに相談するのも良いですね。ネット通販の口コミを参考にしたり、製品と同ブランドが提供する手入れ道具を購入してみたりもおすすめです。
ここでは、使用前・毎日・定期・汚れが付いた時と、それぞれのメンテナンス方法を説明します。
使用前に行う手入れ
準備するもの
- クロス(または柔らかい布)
- 革専用の防水スプレー
手入れ方法
- 柔らかい布で革表面を優しく拭きます。
- 防水スプレーを30cm離した所から噴霧します。
- 風通しの良い日陰で乾燥させたら完了です。
新品のときには、初めの乾拭きはさっと済ませるくらいで大丈夫です。水汚れ対策として「防水スプレー」が効果的ですが、全面に噴霧しても問題がないか、最初に目立たない箇所で試してください。
また、革によく浸透する「防水クリーム」もあります。状況に応じて使い分けると品質が保てますよ。
毎日行う手入れ
準備するもの
- 馬毛ブラシ
- クロス(または柔らかい布)
手入れ方法
- 馬毛ブラシで、表面に付いた埃や塵をはらいます。
- ブラシで届かなかった細かい所を、クロスで乾拭きして完了です。
チャックや金具の間は汚れがたまりやすいので、気に留めながらブラッシングします。ブラッシングでほとんど汚れは落とせているので、乾拭きは届かなかった箇所のみ行います。乾拭きは、力を入れ過ぎないように注意しましょう。
定期的に行う手入れ
準備するもの
- 馬毛ブラシ
- クロス(または柔らかい布)を数枚
- 皮革用の保湿剤
- 防水スプレー
手入れ方法
- 馬毛ブラシで丁寧にブラッシングします。
- 保湿剤をクロスに少量取り、まんべんなく革に塗り広げます。
- 新しいクロスに変え、乾拭きします。
- 防水スプレーを離れた所からかけて、日光の当たらない通気性の良い場所で乾かしたら完了です。
傷に強いシュリンクレザーですが、栄養や油分補給は重要な工程です。
保湿剤は定期メンテナンスでは鉄板のアイテム。とはいっても塗り過ぎは禁物なので、3の工程で余分な保湿剤をふき取るために乾拭きしてくださいね。仕上げ磨きの作用もあるので、より美しくなります。
汚れが付いたときの手入れ
使い続けるとどうしても付く汚れ。洗濯できないこともありませんが、取り扱いが難しい革だからこそ専用の道具で落とすのがおすすめ。
汚れを見つけた時に必要な、準備しておくと道具と手順を説明します。
準備するもの
- 馬毛ブラシ
- ステインリムーバー(皮革専用の汚れ落とし)
- クロスを数枚
- 保革クリーム
手入れ方法
- 馬毛ブラシで丁寧にブラッシングします。
- ステインリムーバーをクロスに少量取り、汚れ部分に塗ります。
- 新しいクロスに変え、汚れと余分なステインリムーバーを拭き取ります。
- 保革クリームを塗って乾かしたら完了です。
汚れが落ちない場合は、2と3の工程を繰り返してください。汚れ落とし剤は革の油分まで取ってしまうため、最後の保革クリームは忘れないようにしましょう。
メンテナンスを怠ると、汚れに気が付きにくいことも。汚れが革の奥まで入り込むと自分では落とせなくなるので、ブラッシングや乾拭きの時にチェックしましょう。
シュリンクレザーを使用していく際の注意点
シュリンクレザーにはデメリットもあります。
デメリット
- あまり伸縮性がない。
- 水が付くと色移りしやすい。
- 気温の変化で型崩れを起こす。
水が付くとそこに触れた部分へ色が移ることがあり、革製品以外の持ち物に影響を及ぼすかもしれません。万能という訳でもないので丁寧に扱いましょう。
水が付いてしまったら
革は、水にぬれると縮んで硬化する性質があります。フォルムや見た目の印象を損なう可能性もあるため、早急に対応することが大切です。手順は次の通り。
- ぬれた場所を乾いた布で拭く。
- 風通しの良い日陰で十分に乾燥させる。
- 水が付いていた所に、保湿剤を塗る。
定期メンテナンスにて「防水スプレー」をしているかどうかで、水にぬれた際の革のダメージは大きく変わります。
革製品は使用していくうちに愛着が出てくるアイテムです。コストもそれほどかからないので、定期メンテナンスでの防水スプレーの使用をおすすめします。
バッグなどを乾かす際、ぬれた範囲が広ければ中にキッチンペーパーを詰めましょう。型崩れを防ぐことができます。また、乾いた布を普段から持ち歩いていれば突然の雨でも安心です。
手入れ方法を知って長く綺麗に使おう
「シュリンクレザー」は聞きなれない名前かもしれません。しかし、実は身近な商品にも多く使われています。
日々のケアはブラッシングか乾拭きのみで十分なので、持ちやすいレザーアイテムです。シュリンクレザーの魅力を継続するためには、定期ケアも充実させましょう。